[0176-201404] 靴屋だった私が甲高幅広のあなたにそれでも幅広を薦めない理由。

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このブログでは靴の選び方について、フィッティングからお手入れの方法、そしてデザインまで、男性女性問わず様々な視点から繰り返し折に触れて書いています。おかげさまで「甲高幅広」「バンビロ」では毎日非常に多くの方にご覧頂いています。

最初に書いてから1年以上が経ちましたので、この間に新たに書いた文章も含めて、改めて追記しつつ、全面的に書き直しを行いました。多少長めの文章ではありますが、その分つまみ読みでも何かしら一つでも勘違いに気づいたりと持ち帰れるものがあれば、と思っています。

この後の目次にもありますが、今回は1で日本人と靴との関係と歴史について簡単に触れました。詳しくはそれぞれのリンク先を追加で参照頂けると嬉しいです。

3で「足と靴のサイズの誤解」、続いて4で「靴紐を結ばないことの影響」という視点から、靴の履き方選び方が自分を甲高幅広だと勘違いさせてしまっている可能性について挙げています。

5ではきちんと自分の足のサイズと形を把握せずにゆったり目の楽な靴を選ぶことが足だけでなく腰や身体全体へ大きな影響を与えることについて述べ、6で忙しい人ほどまずは自分の足への先入観を捨てて、信頼できる靴屋さんでじっくり時間をかけて一度しっかりフィットした靴の感覚というものを覚えてしまいましょう、とまとめています。

最後に女性に多い悩みとしての「外反母趾」「内反小趾」の悩みについて7で補足しています。

目次

私が靴屋にいた頃、毎日何人もの人の口から出てくる言葉がこれでした。

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まだ私が靴屋さんで働いていた頃、とにかく毎日のように聞く悩みがこれでした。
「俺(私)バンビロ(ダンビロ)だから、痛くない大きめの靴が欲しいんだけど。」

女性の場合にはこの「甲高幅広」に「外反母趾」の悩みも加わります。(これらにお悩みの方は、文末をご参照下さい)

皆さんの悩みはとても分かります。痛い靴ほど一日辛いものはありません。

皆さん悩みがありながらも、何故か靴選びにはほとんど時間をかけない。

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この痛いには幾つかパターンがあって、単純にパンパンに張ってしまうくらい靴の中で窮屈な場合(だからといって幅広甲高とは限らない)と、指などどこかが当たってしまって痛い場合に大きく分けられます。

皆さんお忙しい中で靴屋に足を運ぶわけで、さっさといつものサイズなり幅広モデルを買って帰りたい訳です。靴屋さんとしても下手にジャストサイズを選んでお勧めしてもきちんとした履き方をしてくれなければ痛くなってクレームが出るので、面倒なのでお客さんの言うサイズで文句が出なければそのままさっさと売ってしまうこともあります。

人は緩さには寛容でもホンの僅かの痛さでも許せないものです。

日本人の靴との付き合いの浅さ(歴史の短さ)が誤解を助長している。

けれど、元靴屋としては、靴こそ本当はまずは一度でも良いのできちんと時間をかけて選んで欲しい。そしてその時には、自分の靴のサイズや甲高幅広だという先入観を一度取り払って、靴の履き方、選び方を一度おさらいして欲しいのです。

日本はまだまだ靴の歴史の短い国です。草履や下駄などが一般的だった一般の人に靴が普及したのは戦後だそうです。つまりまだ100年も経っていません。

そして、元々草履や下駄、家で靴を脱ぐ、サンダルが好き、といったこともあって、そもそもの履き方からして間違えたまま、学ぶことなく大人になってしまった方が非常に多いのです。それが、甲高幅広という勘違いにもつながっています。そして更に助長させてしまっています。

甲高幅広のあなたに訊いてみたい、あなたの足と靴に関する2つの質問。

私が甲高幅広のあなたに、それでも幅広の靴を薦めない理由。それを今回は次の2点に絞ってお伝えしたいと思います。

「あなたは自分の足の長さを測ったことがありますか?」
「あなたは靴を履くとき、紐をきちんと解いて履き、しっかり結んでいますか?」

あなたは自分の足の長さを測ったことがありますか?

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あなたは自分の足の長さを測ったことがありますか?

「あるよ、いつも28.5センチの靴を履いてるよ」

こう思われた方、それは靴のサイズですか?足の長さですか?

この2つは厳密には全く違います。子どもの頃、既に25センチなどの靴を履いていた覚えがありませんか?

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日本では親は「成長期だからすぐ足が大きくなるから」と特に子どもの足に注意を払わず、言われた通りのサイズか、それより大きめを買ってきます。子どもとしても大きいサイズのほうがかっこいい気がして特に考えずに育ちます。無意識に足を痛めながら。大人になってもそのまま疑いもせず。

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靴のサイズは足の長さとは全く別で、各社ある程度の目安はあっても木型もフィット感もバラバラです。

靴のサイズというのは、そのメーカーが独自に定めた「その靴の大きさ」です。一般的に靴の中敷きの長さを目安にしていることが多いと言われています。ですので、靴のデザインからそのメーカーのコンセプトまで加わって、各社バラバラです。

一応JIS規格というものが定められています。中にはこの規格に「基づいて」作られている場合もあります。リーガルなど国内革靴メーカーは比較的この規格に基づいたサイズ表記をしていますが、それでも各社違いが出てきます。靴によっても違います。

[0385-201412] 「幅広だからEEE(3E)」は正しいのか、ウィズと横幅、JIS規格から考えてみる。

2014.12.07

この場合には、中に入る「足の長さと足回り、足の横幅」に基づいてその規格表に照らし合わせてサイズとウィズ(日本ではなぜかワイズと変形)が決まります。それがひとまず最初のフィッティングになります。

革靴に慣れ親しんでいない私たちは、本来のサイズより遥かに大きいサイズを無意識に選んでいる。

なぜいきなりこんな面倒なことを書いたのか。それは、この子どもの頃の大きめサイズ、更にスニーカーや運動靴で育った日本人には、自分の足の長さを測るという習慣がないため、大抵2〜3サイズ大きめの靴を無意識に選んでいることが多いからです。

この大きめの靴を無意識に履いている、ということが甲高幅広とどう関係してくるのか疑問に思われた方も多いと思います。

ところが、この大きめの靴を履いていることが、冒頭の「窮屈」「痛い」原因になっていることが大半なのです。

あなたは靴紐をちゃんと結べますか?靴の履き方をご存知ですか?

あなたの普段履いている靴は、靴紐を毎回緩めて履いていますか?そもそも解くのが面倒だから最初から緩めにして、適当に足を突っ込んで履いていませんか?

靴屋では、「痛くない靴」とともに「履きやすい靴」が好まれます。これは草履や下駄、スリッパやサンダル、スニーカーで育ち、一日に脱ぎ履きが比較的多い日本だから、とも言えるのですが、結果、紐がほとんど意識されていません。大人になっても靴紐をちゃんと結べない人(縦結びになっている人も含め)がかなりの割合でいます。

履きやすい靴、というのは脱げやすい靴でもあります。つまり、靴の中で足がちゃんと安定していないんですね。安定しないとどうなるか。人は歩く時に無意識にサンダルやスリッパ同様、足の前半分で靴を履こうとするため、靴の奥まで足を突っ込んでしまいます。

脱ぎ履きが楽な靴を履いている限り、足の痛みも窮屈さも解消されません。

靴の先端の方まで足を突っ込んで履けば、スニーカーならまだしも、革靴であれば当然痛いところが出てきます。そして、キツいと感じるようになります。靴は紐できちんと甲部分が押さえられ、踵が靴の踵部分にピッタリ合った状態で履けば足回り、指周りは余裕が出来て楽なように作られています。その時、靴は軽いと感じられ、革靴でもピッタリ合ったものであれば下手なスニーカーより走りやすいものです。

あなたが自分が幅広だから当たって痛い、キツいと思っているその靴は、踵に指が入りますか?入るようであれば、そもそも紐が機能していません。機能していなければ足は靴の狭い部分に入っていきます。足も脱げないように無意識に力が入ります。余計に痛くなります。

ちょっと脱線。同じ幅広といっても、多種多様なんです。甲が高いか低いかだけでも全く変わります。

今回は触れませんが、同じように幅広、と感じている方でも、「幅広甲高」から「幅は広くないけど甲高」「幅は広いけれど甲はそれほどでもない」「幅は広いけれど足自体が薄い」など様々です。そして、一般的に靴屋で売っている「幅広モデル」は、どの自称幅広さんが履いても文句やクレームが出ないように、ほぼ「幅も広くて甲も高い」モデルが一般的になっています。

そして、そもそも考えてみてください。これだけ戦後、日本人は幅広甲高だと言われ続けてきたんです。終戦直後から高度経済成長期くらいまではそうだったかもしれません。となれば、日本の靴メーカーが作る靴は、木型は全体的に最初から標準サイズですら「幅広甲高」気味に作られているんですね。とりあえず幅広甲高に作っておけば文句が出ないんです。

幅広を気にする方が絶対視する3E、4Eの曖昧さ。私は表記しないほうが余程間違わないと思うくらいです。

例えば日本を代表する靴メーカー、リーガルの40年以上変わらず作られている定番中の定番。2504NAは、ウィズは日本の靴の標準2Eです。けれど、これを履かれると皆さん、「痛い」と言われます。何故なら靴自体が太いんです。いつもと同じサイズで選んでしまうと紐で足を押さえきれず、当たる部分が色々出てきます。で、却って同じサイズの3Eの別の靴のほうが狭くてきつく感じるかもしれません。

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同じ2Eでも、3Eでも、木型によって全くフィット感が違います。3Eより2Eのほうが幅がゆったり感じる方も実際に結構います。

そんな元々幅広甲高気味に作られている日本の靴の中でも幅広モデル。これは余程の幅広や甲高でないとなかなか合いません。合うとしたら、本当に典型的な昔ながらの日本人か、体格の良い方、もしくはもう既に足の筋肉が衰えてしまって足が潰れて平たくなってしまった方です。

靴はデザインで選ぶと間違えます。同様に、サイズ表記だけで選ぶと失敗します。

靴は見た目で選ぶと失敗します。細そうに見えて実はものすごく特殊な木型だったり、デザイン一つで太くも細くも見せることができるからです。

同様に、サイズ表記(「幅広モデル!」などの幅の表記も含め)も、自分の足の形と癖を知らずに選べば、足にとっては大きな負担になります。

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幅広、ゆったり靴が怖いのは、痛み以上に、ジワジワと気付かない内に身体を歪め傷めてしまうことです。

痛くて履けない、といったすぐ分かる症状ならまだマシです。怖いのは、何となく履けてしまうこと。何となくゆったりだから楽、と勘違いしてしまうこと。これは実際には足だけでなく、腰や背中、首、頭にまでかなり負担をかけています。それもジワジワと。

何故なら、足は一歩歩く度に安定しない靴の中で必死に歪みを修正しようとします。常に足に力を入れながら、時に足を庇いながら踏み出し、身体を支えるために、徐々に歩き方が変わってきます。変わってくると足だけで支えきれない負担を腰や体全体を使って補い合います。それくらい、足というのは鈍感でありながら、だからこそ気付かない内に身体を歪め、様々な影響が出てきてしまうのです。

安易な中敷き選びが益々足を苦しめている。

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そして、世の中には、そうした「痛いのが嫌だ」という人のために、靴の中敷きなどを柔らかくして当たりを誤魔化してしまっているものも多々あります。更に大きければ中敷きを入れればいいや、といい加減な中敷きを適当に買うので、足にとってはもう最悪です。

[0525-201501] 「汗かきだから大きめのサイズで中敷き」なんて考えるから益々汗かくんです。靴選びでやってしまいがちな勘違い。

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2014.12.10

まとめとして。まずは足のサイズを測りましょう。その上で、信頼できる靴屋さんで最低でも1時間かけて靴を選んでみてください。

冒頭の質問に戻ります。あなたの足の長さは左右それぞれ何センチですか?(左右違います)そして、足幅と足回りは何センチですか?

これはすぐに家でも調べられます。その上で、それを分かった上で、ネットではなくまずは信頼できる靴屋さんに行って下さい。

そして、最低でも1時間はかけて靴を徹底的に選んで下さい

忙しくてそんな暇はない?本当に忙しい人はそんなセリフ吐きません。

そして、本当に忙しい人ほど、一日の、そしてそれから先何年も、何十年ものパフォーマンスに大きく影響する靴に関しては妥協しません。それは値段とかデザインに、ではなく、フィッティングに、です。プロのアスリートもそうですよね?

[0343-201410] 就職活動を迎えるあなたへ。これからの25年間に差が出る革靴とスーツの選び方。

2014.10.18
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一度徹底的に自分の足に合う(と思われる)靴が見つかった、と思っても、そこから歩きグセや歳を重ねるにつれて足の形は変わっていきます。その都度自分に合う靴は変わってくるでしょう。けれど、その時にはもうあなた自身が一番自分の足のことは分かっていると思います。

だから、もう一度だけ、甲高幅広なんて言葉はすっかり忘れて、最低1時間かけて、信頼できる靴屋さんで靴をしっかり選んでみてください。その際はサイズ表記も「幅広モデルで楽」表記も一切無視して選んでみてくださいね。

最後に。もしあなたやあなたの大切な人が外反母趾や内反小趾で悩んでいたら。

こちらも合わせて読んで頂けると嬉しいです。靴屋で働いていた頃、当然女性のお客さんも多くいらっしゃいました。そして、幅広や幅広甲高に関しては同様に悩まれているのですが、それ以上に皆さん気にされている、苦しまれているのがこの2つ。「外反母趾」と「内反小趾」です。

既にそう診断されて治療を受けている方でも、靴を選ぶ段階になると皆さん揃って「更に悪化させてしまう」靴の選び方をしてしまうのです。それが「外反母趾(内反小趾)が痛いから、大きめのサイズ、幅広の靴が欲しい」と言われること。

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このブログでは主に下の2つでこれらについての傾向と対策に触れています。簡単なことで足への負担は大きく変わってきます。お時間のある時に是非お読み下さい。

[0524-201501] 外反母趾、足が痛い、むくむ。女性のあなたに伝えたい。お店で気付いた、パンプス選びで陥りがちな靴選びの誤解。

2015.01.11

[0190-201405] もしあなたが外反母趾なら、自己判断で靴を選ばずに、一度しっかり靴屋で相談して欲しいなぁ。大抵大きいサイズ履いて悪化させてるから。

2014.05.12

大切な娘さんのローファーをもしこれから選ぶのであれば心に留めておいてほしいこと。

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また、大切な娘さんのローファーを選ぶ際にも、気をつけて頂きたいことをまとめています。成長期だから、すぐボロボロにするから、と大きめのサイズを選んだり、そもそも初めての革靴で分かるはずもない履き心地を本人に判断させてしまうことで、これから先、同様に外反母趾や内反小趾、足のむくみや変形といった悩みを抱えさせてしまうことも多くなります。是非合わせてご参照下さい。

[0631-201502] この春、中学や高校に入学する娘さんがいるお母さんに贈る、大切なローファーの選び方。

2015.02.07
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